市松人形とは、日本人形の着せ替え人形の一種です。一般的には女の子は、黒髪のおかっぱ頭の着物姿をしており、男の子は羽織、袴を身に着けた、5歳から6歳くらいの子供をモデルとして作られたお人形のことを指しています。見た目は、初めからおかっぱ頭だったわけではなく、時代とともに変化をしており、明治時代頃から現在のイメージで制作されるものも誕生しました。
着せ替えをして楽しむ目的の他にも、初節句には、おまもりとして雛人形と一緒に飾ったり、姉妹全員に雛人形を購入することが難しい場合は雛人形の代わりに市松人形を飾る場合もあります。
大きさは、10センチ前後の小さなものから80センチを超すものまであり、昭和初期頃までの市松人形は着せ替えをして楽しむことができる作りでしたが、現在の市松人形は着せ替えをすることができず、ガラスケースに入れられ観賞用として飾られることが一般的です。
現代の市松人形は、見た目も種類が増え、昔ながらのおかっぱ頭に加え、茶色い髪の毛をした現代的なヘアスタイルのお人形もできあがり雛人形とともに愛されています。
市松人形は、江戸時代の人気歌舞伎役者、佐野川市松に似せたお人形ができたことに由来するといわれており、幕末の喜多川守貞の「守貞謾稿(もりさだまんこう)」にも記されています。そして、現在の「市松模様」という言葉も佐野川市松が好んで着たことから市松人形とともに現代まで伝えられています。
市松人形と呼ばれるようになる前からも、「抱き人形」としての文化や、子供姿の「裸人形」として男女のお人形があり、衣装を着せ替えたり、抱っこをしてかわいがったり、高級品は雛人形と一緒に飾られることもありました。
昭和初期に市松人形は「やまと人形」と呼ばれた時期もありましたが、戦後、市松人形という名称で再度全国に広まることになり、現在も雛人形と一緒に飾られています。昭和初期には数多くいた伝統の市松人形師も現代になり日本で数名となりましたが、伝統工芸の市松人形を後世に伝えていくために制作を続けています。市松人形は、江戸時代から人々に愛され、今なお着せ替え人形や観賞用、女の子のお祝いとしても大切にされ続けている日本の伝統のお人形です。