陰紋・日向紋とは?家紋について分かりやすく解説
家紋には、雲や波、草花など自然界の描写や文字を意匠化したものなど、さまざまであり、5000種類にも及ぶとされています。
本記事では、家紋の中でも陰紋・日向紋に焦点を当てつつ、後半では家紋の入れ方と格の関係などについて解説します。
陰紋・日向紋とは
陰紋も日向紋も、家紋用語の一種です。陰紋とは、家紋を輪郭線のみで表現したものです。それに対して、日向紋とは、家紋を白抜きで表したものです。
通常、紋章といえば日向紋であり、あえて紋名に「日向」をつけることはありません。陰紋が用いられるのは、本家に対して分家が遠慮して採用するケースや、略礼装の着物が仰々しくならないようにするケースなどが考えられます。
また、中陰紋という家紋もあります。陰紋と同様に紋の型を白でなぞりますが、陰紋より太い線で、模様の部分の描写は省かれた形です。
格が高いのは、白で色が抜かれている面が多いもので、格の高さ順に並べると「日向紋 > 中陰紋 > 陰紋」のようになります。
着物の紋の入れ方の違い
紋の入れ方にも格の違いがあります。
染め抜き紋
染め抜き紋とは、紋の形を白く染め抜く技法であり、最も格式が高い家紋の入れ方です。正礼装の着物には、染め抜き紋を入れるのが一般的です。
石持ち入れ紋
石持ち入れ紋とは、後に紋入れする箇所を丸く染め抜いてある(染めていない状態にしている)、染め抜き紋の手法のひとつです。
あらかじめ白い丸型にした箇所に紋を描き入れます。
縫い紋
縫い紋とは、糸で縫うことで家紋を入れる技法です。刺繍紋とも呼ばれます。縫い紋は、染め抜き紋に比べると格が下がり、略礼服で使用されます。
貼り付け紋
紋を描いた生地を上から貼り合わせるワッペンのようなもので、紋を変える場合や、色が抜けない場合などに使います。
格の高さで並べると「染め抜き紋 > 縫い紋 > 貼り付け紋」となります。
留袖や男性用の紋付きの着物や喪服には、染め抜きの日向紋を使うのが正装になります。
着物の紋の大きさは?
特に紋の大きさに決まりはないのですが、おおよそ男性が約3.8cm、女性が約2cm程度です。
紋の周りに飾りが入る洒落紋は、サイズが大きくなる傾向にあります。
着物の紋の数と格
着物の紋の数で格が決まります。
紋を入れる場所は、下記のように決まっています。
前紋
胸より少し上の左右につける。
背紋
衿付けの約5.7cm下がった背縫いにする。
袖紋
袖の肩山から約7.5cm下がった左右の袖につける。
上記の箇所に全部で5つの紋が入りますが、他の場所には紋を入れません。
また、入れる数によって呼び名があります。
五つ紋
前紋、背紋、袖紋の全部が入り、もっとも格が高く、留袖、男性用の紋付き、喪服の第一礼装に利用されます。
三つ紋
背紋、袖紋の2カ所に3つの紋が入り、訪問着、付け下げ、色無地などの略礼装に利用されます。
一つ紋
背紋だけ1つの紋が入り、訪問着や付け下げ、色無地などの略礼装に利用されます。
「紋の数が多い=格が高い」ことを意味します。
「五つ紋 > 三つ紋 > 一つ紋」
五つ紋は第一礼装、三つ紋と一つ紋は略礼装になります。
第一礼装になる色留袖は、他の第一礼装とは違い三つ紋と一つ紋も入れられますが、その場合は略礼装になるので、第一礼装としては着用できません。
まとめ
陰紋・日向紋や、家紋の入れ方などについて説明しました。着物を着用する際は、家紋にも注目してみてください。