実家じまいでやってはいけないこと|失敗を防ぐ正しい順番

実家じまいは、多くの人にとって一生に一度あるかないかの作業です。戸建ての、しかも2階建てで部屋数もそれなりにある家にいざ手をつけようとすると、片付けるものの多さに唖然とします。
きょうだいがいても実際に手を動かすのは実家の近くに住む特定のひとり、ということも珍しくないでしょう。ときに不満を覚えながらも、目の前の作業を淡々と進めていかなければなりません。
ただ、そのなかには、勢いで処分すると後戻りできないものもあります。また、家の解体のように大きなお金が動く決断もあります。こうした判断に迷うものほど、先にやってはいけないことを知っておくと見通しが良くなるはずです。
実家じまいの失敗の多くは、着手する前に知っておけば防げます。落とし穴を押さえて、後悔やトラブルを避けながら進めてください。
実家じまいでやってはいけないモノの手放し方

実家じまいは、限られた時間の中で、しかもきょうだいの物理的な協力を得られないまま、ひとりで進めざるを得ないこともあります。焦って作業すると、物の手放し方で失敗しがちです。代表的なのが次の5つのパターンです。
- 先に全部を処分する
- 一括処分に丸投げする
- 価値を確かめずに捨てる
- 貴重品を探さずに運び出す
- 相続人に相談せず処分する
ひとつずつ見ていきます。
先に全部を処分する
実家じまいを始めると、ものが減るほど前に進んだ気になり、まず家を空っぽにしてしまいたくなります。ただ、ここは少し立ち止まりたいところです。
家財が残っているうちは、選べる道がいくつもあります。家具や道具ごと売りに出すこともできますし、使えそうなものを残して次の活用を考えることもできます。先に空にしてしまうと、そうした道がひとつずつ閉じていって、あとは売るか壊すかだけ、という状態になりがちです。
焦って手を動かす前に、いったん選択肢を残したまま考えてみる。それだけで、あとから取れる手は変わってきます。
一括処分に丸投げする
不用品回収業者にまとめて頼む。これ自体は、悪い方法ではありません。最近の業者は、買い取れそうなものには値段をつけて、回収費用から差し引いてくれることもあります。
ただ、買取そのものは、やはり買取専門の業者のほうが強いです。とくに価値のありそうなものは、回収業者や街のリサイクルショップよりも、その分野に特化した買取業者に見てもらったほうが、しっかり値がつきます。何がどれだけの価値になるかは、見てもらうまでわかりません。
急ぐ気持ちのまま一式で頼んでしまうと、本来なら値がついたはずのものまで処分費のほうに回って、結果として費用がかさむことがあります。まずは一度、価値を見てもらう。そこからでも遅くはありません。
価値を確かめずに捨てる
先ほども触れたように、値がつきそうなものは買い取ってもらって、処分費の足しにするのがおすすめです。
自分では価値がわからないものほど、意外なところにお金がつくことがあります。例えば、こんなものです。
- 昭和レトロな人形
- 動かないフィルムカメラや古いレンズ
- 古い切手のアルバム
- 和食器や酒器
- レコード
反対に、婚礼家具のなかでも古いものは、状態が良くても引き取り手が少なく、なかなか値がつきません。
判断に迷ったら、出張買取に見てもらうのがはやいです。たいていは無料で来てくれるので、ひと手間はかかっても、損はしにくいです。
ついでに言えば、この先いろいろと費用がかかる実家じまいだからこそ、家財の買取はまとまった資金の足しになります。買取を使ったことがなければ、ここで一度経験しておくのもいいかもしれません。手元のものが思いのほかすんなりお金に変わる感覚は、知っておいて損はありません。
貴重品を探さずに運び出す
貴重品とは、以下のようなものを指しています。
- 通帳や実印
- 権利証
- 保険証券
こうしたものは、机の引き出しよりも、仏壇の引き出しや押し入れの奥、額縁の裏などから出てくることがあります。現金を封筒に分けてしまっている家もありますし、遺言書が本棚に立てたままになっていたりします。
そして、搬出が始まってしまうと、もう探しようがありません。どの段ボールに入ったかは、積み終えたあとでは誰にもわかりません。運び出す前に、家じゅうの引き出しと封筒を、一度ずつ開けておきたいところです。
残しておくべきものは、「捨ててはいけない遺品」にまとめています。
相続人に相談せず処分する
親が亡くなったあとの家財は、遺産分割協議が終わるまで、相続人全員の共有財産です。ひとりの勝手な判断で処分すると、あとで他の相続人とのトラブルになりかねません。
処分を始める前に、何をいつ手放すのかを相続人に伝えて、了承をとっておきましょう。写真を撮って共有しておくだけでも、あとから話がこじれにくくなります。
実家じまいでやってはいけない建物の扱い

モノの手放し方が決まったら、次は建物です。ここから先は、自分の都合より制度の期限が主導権を持ちます。固定資産税、空き家への勧告、相続登記。動かずにいるほど不利になり、急いで動いても損が出ます。
急いで解体して更地にする
住宅が建っている土地は、200平方メートルまでの部分について、固定資産税の課税標準額が6分の1に軽減されます。これを住宅用地特例といいますが、建物を解体して更地にすると、翌年からこの特例が外れます。
このとき、固定資産税が6倍になると書かれることがよくあります。ただ、実際にはそこまで上がりません。特例が外れた土地にも負担調整措置が働いて、課税標準額は評価額の70%が上限になるためです。神戸市も、特例が解除された土地の固定資産税はおよそ3.5倍になると説明しています。
それでも負担が増えるのは確かなので、解体を決めるのは、ほかの選択肢を検討したあとでも遅くありません。解体費に補助を出す自治体もあるため、実家じまいで使える補助金を先に調べておくと、動き方が変わってきます。
空き家のまま放置する
2023年12月に空家法が改正され、管理不全空家という区分が新しくできました。これは、放置すると特定空家になりかねない状態の空き家のことで、窓や外壁が傷んでいたり、庭木が伸び放題になっていたりする家が対象になります。
この管理不全空家として勧告を受けると、その土地の住宅用地特例が外れます。建物を残したままでも、更地に近い課税になるということです。さらに状態が悪化して特定空家に指定され、改善命令にも従わなければ、50万円以下の過料の対象になります。これは罰金と書かれることもありますが、正しくは行政上のペナルティです。それでも放置を続けると、最終的には行政代執行で建物が解体され、その費用は所有者に請求されます。
相続登記を後回しにする
2024年4月1日から、相続登記の申請が義務になりました。不動産を取得したと知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がなければ10万円以下の過料の対象になります。施行より前に起きた相続もさかのぼって対象になり、こちらの期限は2027年3月末までです。
ただ、過料そのものより実際に困るのは、名義が親のままでは、その家を売ることも壊すこともできないことです。実家じまいを進めようにも、名義を移しておかないと最初の一歩でつまずきます。
実家じまいで起きやすい家族間のトラブル

実家じまいで長く尾を引きやすいのは、お金や手続きよりも、家族との関係です。きょうだいや親族と、忙しいなかで連絡を取り合いながら進めることになりますが、もともとの関係性もそれぞれなので、ちょっとしたことで揉めることもあります。あとに引きずらないよう、家族間のやりとりには気をつけておきたいものです。
親の同意を取らずに進める
親が存命のうちは、家も家財も親のものです。老人ホームなどに移っていても、本人と意思の疎通ができるなら、勝手に進めず、一度きちんと確認しておきましょう。
よかれと思って先に片付けてしまうと、「まだ捨てるつもりはなかった」と親の気持ちとすれ違うことがあります。まずは、これからどう暮らしていきたいのかを聞いて、納得してもらったうえで動くほうが、結果的にうまく進みます。
ひとりで抱え込む
実家の近くに住む子や、長男にあたる人など、特定の誰かに実務が集中しがちです。時間もお金もひとりに偏りやすく、その負担は思った以上に重くなります。
だからこそ、抱え込みすぎないよう、自分でうまく調整していくことも大事です。ある程度はひとりで進めることになったとしても、事前と事後の報告だけは欠かさず、離れて暮らすきょうだいとも最低限の連絡は取り合っておく。それだけで、あとから「聞いていない」と揉める余地は減らせます。
思い出の品を独断で捨てる
アルバムや手紙、子どもの頃の作品といった思い出の品は、いったん捨ててしまうと元に戻せません。作業を急ぎたいなかで、こうしたものにまで気を配るのは負担にも感じますが、ここは避けて通れません。
親が存命なら親に、きょうだいやその子どもにも、捨てていいものかどうかを確認しておきます。自分にとっては何でもないものが、誰かにとっては形見のように大切なものだったりもします。ひと手間ではありますが、覚悟を決めてひとつずつ向き合っていくしかありません。
手が止まってしまう寂しさとの付き合い方は、「実家じまいが寂しいのはなぜ?」で扱っています。
失敗しない実家じまいの順番

ここまで見てきた失敗の多くは、以下のような手順を意識しておくと回避しやすくなります。
- 貴重品を探す
- 価値を確かめる
- 残りを処分する
- 建物をどうするか決める
- 手続きを済ませる
1. 貴重品を探す
先述の通り、まず最初にやるのは貴重品の捜索です。現金や通帳、実印、権利証、保険証券、遺言書などは、仏壇の引き出しや押し入れの奥、額縁の裏、たとう紙のあいだから出てくることがあります。
見つけたものは一か所にまとめて、写真を撮って相続人と共有しておきます。この段階では、まだ何も捨てません。いったん運び出しが始まると、探すのは難しくなります。
2. 価値を確かめる
捨てる前に、値がつくかどうかを確かめます。自分では見分けがつかないものも多いので、まとめて査定に出すのが早いです。「実家じまいで一式見てほしい」と伝えれば、まとめて買い取れる分、来てくれる出張買取の業者は多いはずです。
値がつかなかったものは、自分で処分すれば問題ありません。業者によっては、値のつかないものの引き取りまで引き受けたり、処分業者に取り次いでくれたりもするので、そのあたりは事前に確認しておくといいです。なお、繁忙期や引越しシーズンは予約が埋まりやすいので、急ぐなら早めに動いておくとよいでしょう。
✅️ 合わせて読みたい:出張買取のおすすめ|失敗しない選び方と注意点を体験談つきで解説
3. 残りを処分する
買取で値のついたものを抜いたあと、残りを処分していく番です。その方法は、不用品回収業者に頼む、自治体のごみ収集に出すなど、いくつかあります。
量や種類、手間を見ながら、どれをどの方法で手放すか決めていきます。
4. 建物をどうするか決める
家が空になったら、建物をどうするかを考えます。自分で住む、誰かに貸す、家が建ったまま売る、あるいは更地にして売る。これらを並べて比べましょう。解体して売るとなれば、まとまったお金も動いてきます。
なお、相続した空き家を売るときは、一定の要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける特例があります。令和6年1月以降の譲渡では、売買契約の内容によっては、引き渡し後に買主が取り壊すかたちでも使えるようになりました。ただし細かい要件があるので、詳しくは国税庁の案内で確認してください。
参考:国税庁|No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
5. 手続きを済ませる
最後に残るのが、登記と税金の手続きです。相続登記、建物を壊したなら滅失登記、売って利益が出たなら譲渡所得の申告。期限が決まっているものから片付けていきます。
相続登記は取得を知った日から3年以内、譲渡所得の申告は売った翌年の確定申告のタイミングです。かかるお金の全体像は、「実家じまいの費用は何で決まる?」にまとめています。
実家じまいの失敗でよくある質問

相続放棄したら片付けなくていいのですか
相続放棄をしたあとに家財を処分すると、相続を承認したとみなされ、放棄が認められなくなることがあります(民法921条)。放棄が無効になれば借金も引き継ぐので、片付けに手をつける前に確認が必要です。掃除やゴミ捨て程度なら問題になりにくいですが、家財一式の処分や売却は避けてください。
更地にすると税金は何倍になりますか
6倍とよく言われますが、実際はそこまで上がりません。負担調整措置があるため、税額の伸びは3.5倍程度にとどまるとされています。正確な額は課税明細や自治体の窓口で確認できます。
親が認知症でも売却できますか
判断能力が失われていると、不動産の売買契約は成立せず、子どもが代わりに署名しても無効になることがあります。家庭裁判所に成年後見人を選んでもらえば売却できますが、時間がかかり、後見は本人が亡くなるまで続きます。親が存命で意思の疎通ができるうちに、話し合っておくのが確実です。
まとめ
実家じまいの失敗は、モノの手放し方、建物の扱い、家族間のやりとりの3つに集約されます。どれも、頭の片隅に置きながら進めるだけで、大きな後悔は避けられます。
実家じまいは、決して楽な作業ではありません。ただ、多くの人がいつかは向き合うことになるライフイベントでもあります。あまり気負いすぎず、ひとつずつ進めていけば大丈夫です。
ものの整理は、まず出張買取を利用して、値のつくものを現金化してから手放していくのがおすすめです。たいてい、査定料も出張料もかからず、自宅まで来てもらえます。値がつくものと処分するものをその場で分けられるので、最初の一歩としても動きやすくなります。





