実家じまいの費用は何で決まる?内訳と負担を軽くする順番

親の施設入所や死去をきっかけに、誰も住まなくなった実家の片づけや解体を進めることになった。
少しでも低価格の業者を探したいところですが、実家じまいでは見積書の金額以上に大きな差がつくポイントがあります。
- 相続した空き家の3,000万円特別控除には期限がある
- 家を解体すると、土地の固定資産税が上がることがある
- 家財をまとめて処分すると、売れる物まで手放してしまう
控除を逃せば、税額が数百万円変わることもあります。解体費を10万円抑えるより、影響ははるかに大きくなります。
実家じまいで損を避けるには、業者選びだけでなく、片づけ・解体・売却を進める順番を考えなければなりません。この記事では、先に確認したい期限と各工程にかかる費用、何から始めるべきかを整理します。
実家じまいの費用は金額より期限で決まる

高すぎる見積もりは、交渉や相見積もりで見直せます。しかし、過ぎてしまった期限を取り戻すことはできません。相続登記や空き家特例、固定資産税は、手続きや売却、解体の時期によって扱いが変わります。
相続登記の3年
実家の名義が親のままでは、買い手に所有権を移せません。解体だけなら相続人全員の同意でできますが(民法第251条第1項)、売るには相続登記が要ります。ただし、登記が要るのは売るためだけではありません。相続で不動産を取得した人には、相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内に申請する義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。売らずに持ち続けても、更地にしても、土地の義務は残ります。
義務化は令和6年4月1日に始まりました。それより前に相続を知っていた実家は、放置してきた年数にかかわらず、期限が一律で令和9年3月31日です。20年前の相続も同じ日に揃います。取得を知ったのが令和6年4月以降なら、その日から3年になります。
きょうだいで話がまとまらず、3年で間に合わないこともあります。そのときは相続人申告登記です。自分ひとりで法務局に申し出れば、申し出た本人については義務を果たしたとみなされます。あくまで暫定の措置で、これだけでは売れません。遺産分割が成立したら、その日から3年以内に内容に応じた登記が別途必要になります。
空き家特例の3年
亡くなった親がひとりで住んでいた家を相続し、売って利益が出たとき、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例が使えます。親が要介護認定などを受けて老人ホームに入っていたなら、施設で亡くなっていても対象になり得ます。
売る期限は、相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までです。制度そのものにも期限があり、令和9年12月31日までの譲渡に限られます。
3年と聞くとまだ猶予があると安心しそうになりますが、先に確かめておきたいのは物件そのものの条件です。
- 家屋が昭和56年5月31日以前の建築であること
- 売却代金が1億円以下であること
これらは日付ではなく物件で決まる足切りなので、ここを外していれば3年を待つ意味がありません。
猶予の使い方にも縛りがあります。相続してから売るまで、事業にも賃貸にも住むためにも使っていないこと。空いているあいだに一度でも貸せば、特例は消えます。
一方、解体を3年のなかに押し込む必要はありません。令和6年1月1日以後の譲渡なら、売った翌年の2月15日までに取り壊せば適用されます。買い手が決まってから壊す、あるいは買主に壊してもらう。この順番が取れます。
なお令和6年1月1日以後の譲渡で、その家屋と敷地を相続で取得した人が3人以上いるとき、控除の上限はひとりあたり2,000万円に下がります。合計枠が減るのではなく、各自の枠が減ります。
参考:国税庁|No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
固定資産税の1月1日
固定資産税は、毎年1月1日時点の状況で決まります。その日に住宅が建っていれば土地は住宅用地として扱われ、更地なら扱われません。
12月に解体を終えると、翌年度から上がった土地の税額を払います。年が明けてから壊せば、その年度はまだ住宅が建っていた扱いです。同じ工事でも、終える月で1年度分が変わります。
判定は登記の日付ではなく、1月1日時点の現況です。屋根や外壁が壊されて外気を遮れなくなっていれば、工事が途中でも家屋はないものとして扱われます。年末に着工して屋根から落とせば、そこで1年分を失います。
ただし、日付を待つあいだ放置して良いわけではありません。管理が行き届かず管理不全空家として勧告を受ければ、家が建ったままでも特例は外れます。壊さずに待つ選択と、放っておく選択は別ものです。
実家じまいの家財の片付け費用

解体費を決めるのは、建物の構造と土地の条件です。どちらも、こちらの都合では変えられません。家財の片付けだけが違います。同じ間取りでも見積もりが大きく開き、その開きを生むのは家の広さではなく、なかに何がどれだけ残っているかだからです。
物量で決まる仕組み
片付け費用は、作業に入る人数と日数、そして運び出す物の量と重さで決まります。トラック何台分になるかで処分費が変わり、階段しかない2階からの搬出や、家の前にトラックを停められない立地では、人手が増えて人件費もかさみます。
同じ3LDKでも、見積もりが倍以上に開くことがあります。実家がどの価格帯に着地するかは、納戸や物置、車庫などを開けてみるまでわかりません。業者のサイトに並ぶ間取り別の料金表を眺めても、自分の実家の金額は出てきません。
自分で減らすほど安くなる
費用が物量に比例するなら、先に減らしておくほど総額は下がります。衣類は可燃ごみか古着の資源回収へ、寝具は粗大ごみへ。区分は市区町村で違うので、実家のある自治体の分別表を確かめておきます。自力では運べない大型家具に業者を絞るだけでも、見積もりは軽くなります。
ただし急いで捨てると、通帳や権利証、現金の入った封筒まで一緒に運び出してしまう事故が起きかねません。何を残すのかを決めてから手をつけてください。
安く早く済ませたいときほど、無料回収をうたう軽トラックに渡したくなります。一般家庭から出た廃棄物を運ぶには、市区町村の一般廃棄物処理業の許可か委託が要ります。産業廃棄物の許可や古物商の許可では回収できません。
参考:京都市|違法な「無許可」の不用品回収業者を利用しないでください!
売れる物は総額から引ける
家財のなかには売れる物が混ざっています。捨てれば処分費がかかり、売れば代金が入ります。片付けにかかる費用のなかで、お金が入ってくる工程はここだけです。
古い家で値がつきやすいのは、状態の良い桐たんすや和家具、作家物の食器や着物、フィルムカメラや腕時計、古銭や切手、貴金属です。桐たんすは高級品だから売れると思われがちですが、シミや反りが入っていれば、それだけで値は落ちます。反対に、量販店の合板家具や大型の婚礼家具は値がつきにくくなります。当時は高価でしたが、いまは置ける家が少なく、運び出す手間が代金を上回るからです。
売れる物と、かつて高かった物は違います。何に値がつくのかは「遺品整理で買取できる遺品」にまとめました。
実家が遠いなら、出張買取で自宅まで査定に来てもらえます。
建物の解体にかかる費用

解体は、実家じまいで金額のいちばん大きい工事になります。何にいくらかかるかは構造と立地でほぼ決まり、こちらで下げられる余地はあまりありません。それでも、付帯工事の抜けと壊すタイミングだけは自分で握れます。
構造と立地で変わる
解体費は建物の構造で大きく変わります。木造より鉄骨造、鉄骨造より鉄筋コンクリート造のほうが高くなります。躯体が頑丈なほど重機の作業日数が延び、運び出す廃材も重くなるためです。
金額を左右するのは建物だけではありません。前面道路が狭くて重機やダンプを寄せられない、隣家が近くて手作業に切り替える必要がある。こうした土地の条件が、そのまま人件費と工期に乗ります。坪単価を並べても自分の実家の金額は出ないのは、この土地の分が家ごとに違うからです。
相見積もりで金額が割れるとき、割れているのはたいてい建物ではなく土地の見立てです。
付帯工事とアスベスト調査
解体の見積もりに、庭木やブロック塀、物置や浄化槽の撤去が含まれているとはかぎりません。これらは付帯工事として別に計上されます。また、地中から古い基礎やコンクリートガラが出てくれば、地中障害物(埋設物)として着工後に追加費用が発生します。
もうひとつ見落とされやすいのが、石綿(アスベスト)の事前調査です。建築物の解体では、工事の規模にかかわらず事前調査が義務づけられており、2023年10月1日からは有資格者による調査が必要になりました。築年数の古い実家ほど、この調査費と、含有が見つかったときの除去費が乗ってきます。
更地にすると土地の固定資産税が上がる
住宅が建っている土地には住宅用地の特例があり、200㎡以下の部分は固定資産税の課税標準が価格の6分の1、それを超える部分は3分の1になります。都市計画税は3分の1と3分の2です。建物を壊して更地にすると、この特例が外れます。
ここでよく「固定資産税が6倍になる」と書かれますが、正確ではありません。上がるのは土地の分だけです。更地になれば、建物にかかっていた固定資産税は消えます。しかも土地の分にも、急激な負担増を抑える負担調整措置が働くため、税額がそのまま6倍に跳ね上がるわけではありません。
それでも、買い手が決まる前に壊せば、特例が外れて上がった土地の税額を売れるまで毎年払い続けます。「実家じまいでやってはいけないこと」でも、この取り違えと解体のタイミングにふれています。
参考:三鷹市|負担調整措置とは
売却にかかる費用と手取りを決める税金

売却にかかるお金は、売買価格や評価額に連動します。手数料には法令が定めた上限があり、税額を決めるのは要件を満たすかどうかです。特例がひとつ通れば、手数料の議論がかすむほど手取りが変わります。
仲介手数料
不動産会社に売却を仲介してもらうと、成約時に仲介手数料を払います。上限は法令で決まっているため、会社ごとの差はさほど出ません。
令和6年7月1日から、物件価格が800万円以下の宅地建物には特例が入りました。原則の上限を超えて、30万円の1.1倍(税込33万円)まで受け取れます。売主から見れば手数料の引き上げです。地方の実家はこの価格帯に収まることがあり、原則の計算式より高い請求を受ける場面が出てきます。
ただし、この特例は自動では働きません。媒介契約を結ぶ前に報酬額の説明を受け、合意していることが条件です。改正を理由に一律33万円だと言われても、合意していなければその額に根拠はありません。
参考:高知県|空き家等に係る媒介報酬規制の見直しについて(令和6年7月1日施行)
滅失登記
建物を解体したら、滅失の日から1か月以内に滅失登記を申請します。不動産登記法が定めた義務で(第57条)、正当な理由なく怠れば10万円以下の過料の対象になります(第164条第1項)。市区町村が取り壊しを把握できないと課税台帳から建物が落ちず、存在しない家の固定資産税を請求されかねません。土地の売買や次の登記にも支障が出ます。
自分で法務局に申請することもできますし、土地家屋調査士に頼めばその報酬がかかります。相続登記が売るかどうかに関係なく必要なのに対して、滅失登記は壊したあとにだけ出てくる手続きです。
参考:かすみがうら市|家屋を取り壊したときの手続きについて【固定資産税】
売却益にかかる税金と空き家特例
売却して利益が出ると、譲渡所得として所得税と住民税がかかります。税率は所有期間で決まり、親が長く所有していた実家なら合わせておよそ20%です。ここで効いてくるのが、さきほどの空き家特例です。
期限と足切りをクリアしても、それだけでは決まりません。区分所有建物登記がされていないこと、そして耐震基準を満たすか取り壊されていることも要件です。取壊しは譲渡後でも構いません。ひとつ落とせば、控除は乗りません。
適用を受けるには、家屋のある市区町村で被相続人居住用家屋等確認書の交付を受けます。要件と補助制度は、「実家じまいに補助金は使える?」でまとめています。
参考:国土交通省|空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)
実家じまいの費用を軽くする順番

費用を抑える手立ては、買取と解体、相見積もり。どれも効果はありますが、手をつける順番を間違えると効きめが消えます。安くする方法を増やすより、やる順番を変えるほうが総額は下がります。
捨てる前に売る
家まるごとの処分を先に頼むと、作業は速く終わります。ただ、売れる物まで処分費を払って手放すことになります。払ったうえに、受け取れたはずの代金も失う二重の損です。
順番を入れ替えます。買取の査定を先に入れ、値のつく物を抜いてから、残りを処分に回します。捨てる前に売るのは、自治体もすすめる進め方です。京都市は、まだ使えるものは捨ててしまう前にリユースを検討するよう案内しています。
参考:京都市|大型ごみ
✅️ 合わせて読みたい:出張買取のおすすめ|失敗しない選び方と注意点を体験談つきで解説
解体を最後に判断する
解体は、買い手の見通しが立ってから判断しても遅くありません。更地にすれば住宅用地の特例が外れ、上がった分の土地の税額を、売れるまで毎年払うことになります。
先にふれた通り、買主が引き渡しのあとに取り壊しても空き家特例は使えます。自分で先に壊す理由は、以前より小さくなりました。古家付きの土地として売りに出し、買主の希望を聞いてから決める進め方もあります。ただし翌年2月15日までに壊してもらう必要があるので、売買契約の特約に書き込みます。確認書の申請に必要なのは、それを約した売買契約書の写しです。口約束で引き渡すと、買主が動かないまま期限が過ぎます。
どうしても先に壊すなら、解体そのものを年明けに回します。1月1日に建物が残っていれば、その年度は住宅用地のままです。年内に間に合わせようとして1年度分を余分に払うのは、もったいない判断です。
参考:広島市|被相続人居住用家屋等確認書の交付(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除関係)
見積もりを比べる
解体も片付けも、複数社から見積もりを取って内訳を比べます。ただ、比べる前に済ませておきたい手順があります。家財を先に出しておくことです。
家のなかに残った家財は、解体で出る廃材とは扱いが違います。さきほどの一般廃棄物にあたるため、産業廃棄物の許可だけで請け負う解体業者は、そのままでは運べません。家財が残った状態の見積書には処分費が乗り、先に抜いておけばその行が消えます。
その上で、次を確認します。
- 一式ではなく作業ごとに金額が割れているか
- 付帯工事と廃棄物の処分費が分けて書かれているか
- 追加費用が出る条件が明記されているか
極端に安い金額を出す会社には気をつけてください。国民生活センターに寄せられた不用品回収サービスの相談は、2021年度だけで2,000件を超えます。手口は「不用品回収業者は危険?」にまとめました。
実家じまいの費用でよくある質問

費用は誰が払うのですか
法律で誰が払うと決まっているわけではありません。実務では、実家を相続する相続人が負担するか、相続人どうしで分担します。遺産から支払うという方法もあり、預貯金や売却代金で精算すれば、誰かの持ち出しになりません。
先に立て替えてしまうと、あとの清算でこじれます。着手する前に、誰がどこまで出すのかを兄弟で決めておきます。
お金がないときはどうすればいいですか
手元の現金が少ないときは、支出を削る前に入ってくるお金をつくるほうから動きます。まず家財の買取査定を入れ、売れた代金を片付け費用に充てます。
次に、解体せず古家付きの土地として売る方法を検討します。解体費を売主が負担せずに済み、更地にしたあとの税負担も避けられます。解体や家財処分への補助を設けている自治体もあるので、実家のある市区町村の窓口で確認してみましょう。
遠方の実家でも進められますか
進められますが、交通費と立会いの回数がそのまま負担になります。片付けや査定、解体、売却とそれぞれに立ち会うと、往復が何度も重なります。
査定と搬出をまとめて頼める会社に依頼し、立会いを1回に寄せると、移動そのものを減らせます。
まとめ
実家じまいの費用は、家財の片付けと建物の解体、売却にかかる税金と手続きに分かれます。金額の大小は構造や売買価格が決めます。ただ、総額を変えるのは順番です。家財を先に抜けば解体の見積もりが軽くなり、買い手を待ってから壊せば土地の税額が上がりません。
その上で、日付だけはずらせません。相続登記の3年、空き家特例の3年、固定資産税の1月1日。ひとつ外せば、手数料の交渉で埋められる差ではなくなります。
順番の起点は買取です。売れる物を先に抜けば、代金がそのまま総額から引かれます。桐たんすや食器、古い工具に値がつくかどうかは、開けてみるまでわかりません。出張買取なら自宅まで査定に来てもらえます。片付けに手をつける前に、何が売れるのかを確かめてみてください。






