金価格が歴史的最高値を更新!金価格の推移と高値の要因
金価格が歴史的高騰し、小売価格1グラム=1万円を超えています。
金(ゴールド)の価格は社会経済情勢が不安定化するほど高値になります。
近年、円安・インフレ・低金利などが続いており、安定資産である金の需要が増しています。
そのため金の高値が続いていると考えられます。
金の価格に深く関わる社会情勢について、過去から現在に至るまで価格変動のきっかけとなった事象を、当時の相場価格とともにご紹介します。
また、最新の金相場と、「上昇トレンドが続く」と予想されている今後の見通しについても詳しく解説します。
金買取価格相場 推移グラフ
金買取価格相場の推移をご紹介します。
下記の表とグラフを見ると、直近の金買取価格は多少上下しているものの常に10,000円台となっていることがわかります。
▼田中貴金属 最新版 金価格推移 ※赤字は2023年11月時点における1ヶ月の最高値
▼田中貴金属 店頭小売価格(税込)(円/グラム)
過去最高 金価格
2024年7月17日には日本国内での金の小売価格が13,879円/g となり、過去最高値を更新しました。
金の価格は2023年3月に9,000円台を突破して以来、今もなお歴史的な高騰が続いています。
金相場が高値を付ける要因
金は社会経済情勢が不安定化するほど需要が高まり、金が高騰する仕組みとなっています。
ここでは昨今の金相場が高値傾向となっている主な要因をご説明します。
不安定な社会情勢
金の価格は地政学リスクが高まると上昇する傾向にあります。
地政学リスクとは、世界の政治経済の予測ができず先行きが不透明になるリスクのことを指します。
戦争やテロ、パンデミックや大手企業の倒産など、これらのリスクが高まることで不安定な社会情勢になればなるほど金の価格は上昇します。
なぜなら、金は国の信用力や企業の収益性に依存しない世界共通の価値を持つため、株式や債権のように無価値になるというリスクがありません。
そのため社会情勢が不安定になると、投資家は自分の資産を守るために、リスク分散として金を買い求める傾向があります。
金を買う人が増える=需要の増加により価格が上昇します。
2020年頃からは新型コロナウイルスの大流行により消費が落ち込み、経済は悪化の一途を辿りました。
2023年現在も景気の先行きは不透明な状況です。
さらにその後もロシアのウクライナ侵攻やパレスチナ情勢の悪化など、世界の社会経済状況を不安定化させる事象が続発しているため世界中で投資目的の金への需要が増し、金価格が高騰していると考えられます。
極端な円安・ドル高基調のため
2023年11月現在、円相場は1ドル=150円台半ばと極端な円安・ドル高基調が続いています。
円安とはドルやユーロなどの諸外国通貨に対して円の価値が下がる事を意味し、円安・ドル高になると金の価格は上昇します。
これは、金そのものの価値が変わったわけではなく、他の通貨に対して円の価値が下がったため、金を買うのに必要な円が増えるという仕組みです。
さらに、円安になると海外の投資家が日本の金を買い求める事も、金の価格が高騰する要因となっています。
このように2022年頃から進行した円安ドル高の影響を受けて、現在も金の価格は上昇し続けています。
世界的にインフレが進行しているため
ロシアのウクライナ侵攻や、それによる天然ガスなどのエネルギー価格の高騰、コロナ禍による大規模な減税や給付金支給を行ったことで、各国で財政収支が大幅に悪化しました。
そのため2023年現在、世界的にインフレが進行しており急速な沈静化は見込めない状況になっています。
インフレ(インフレーション)とは、「継続的に物価が上昇し、自国通貨の価値が下がる状態」のこと、すなわちモノに対する「お金の価値」が下がることを意味します。
金もインフレ時には他のモノと同様に、価格が上昇するうえに保有することで「お金の価値」低下への備えにもなります。
そのため金はインフレ時にリスク回避として需要が増す傾向にあり、価格高騰の要因のひとつとなっています。
低金利が続いているため
コロナ禍からの復旧を図るため、最近まで各国は金融緩和を行っており、その結果大幅な金利引下げとなりました。
日本でも依然として低金利政策が継続されている状況で、低金利が続いています。
金利が低い状態では、銀行にお金を預けてもほとんど利息や配当などのリターンを受けることができないため預金や債券を保有するメリットがあまり無い状態といえます。
一方でもともと金には金利がつきません。
投資対象としての金は、保有していても預金や債券、あるいは株式のように利息・配当を受け取れるわけではありません。
しかしこの低金利によって、株式や債券の魅力が減少したことに加え、金保有のデメリットがそれほど感じられなかったため、結果的に金への需要が増し価格高騰に繋がったと考えられます。
金の過去最低金価格
金の過去最低価格は1998年の865円/gです。
2023年現在に至るまで、この最低額は更新されていません。
1980年には過去2番目の高値となった金価格でしたが、その後は20年以上も下落の一途をたどります。
金価格は原油価格と比例する関係であり、この長期にわたる下落傾向は1983年にOPECが実施した原油価格の大幅な値下げから始まったとされています。
1980年代後半の日本は高度成長期、いわゆるバブル経済期に突入した時代であり、平均株価は大きく上昇して一時期は4万円近くにも達しています。
株価と金の価格は基本的に反比例するため、この頃金の価格はさらに大きく下落することとなりました。
そしてバブル崩壊後の1991年以降も金の価格は下がり続け1000円台に突入し、1998年には先にも挙げた865円/gという史上最低価格を記録することとなりました。
金の相場価格 2000年代以降の動き
金の相場価格は80年代から90年代にかけて下落傾向にありましたが、2000年代に入って以来、上昇傾向が続いています。
その要因となった社会情勢について、当時の金相場とともにご説明します。
2001年・・・金相場平均額1,105円/g
2001年9月11日に起こったイスラム過激派によるアメリカ同時多発テロ「9.11」は、下落傾向にあった金価格を上昇に転じさせるきっかけとなった出来事です。
テロの発生直後から金融市場は大混乱に陥り、アメリカの株価は大幅に下落します。
基軸通貨としての信用が失墜した米ドルは売り込まれ、「無国籍通貨」である金が安全資産として買われていき、金は「有事の金」としての地位を回復しました。
さらに2001年のITバブル崩壊も金価格を押し上げた要因の一つとされています。
1999年から2000年にかけて米国において通信やIT(情報技術)関連企業の株価が急騰しました。
これをITバブルと呼びますが、その後すぐに多くの企業が利益の裏付けがなく事業展開に失敗、不正会計が発覚するなどして株価が暴落し、結果的に金の価格が上昇しました。
2003年・・・金相場平均額1,399円/g
金の価格は戦争の予兆で上がり、勃発で下がるという傾向があります。
2003年のイラク戦争でも開戦直前の2002年末頃から金価格が急上昇し、戦争勃発直後の2003年3月に下落しています。
ただ戦争による価格の上下は一時的である場合が多く、その後は再び上昇傾向に転じています。
2007年・・・金相場平均額2,659円/g
2007のサブプライムローン問題も金価格上昇の要因となりました。
2007年の金の最高価格は3000円台を突破しています。
その後2008年にはリーマンショックによって金価格は一時期値下がりましたが、3年も経たぬ間に再び金価格は上昇傾向へと転じます。
2013年・・・金相場平均額4,453円/g
2013年に金融緩和政策「アベノミクス」が実施されます。
アベノミクスとは当時の首相、安倍晋三氏が表明した「3本の矢」を柱とする経済政策のことで、これにより円安が促進されました。
円安は円建ての金価格を上昇させ、2013年の1年間で4000円台前半から5000円台に迫る急激な値上がりとなりました。
また、大幅な財政出動を伴うアベノミクスは、財政悪化による日本国債の価値低下=金利上昇に対する懸念を呼び起こしました。
そのため安全資産である金への需要がより増加し、金の価格上昇に繋がったとも考えられます。
2020年・・・金相場平均額6,122円/g
2020年からは未知のウイルス、新型コロナウイルスの感染拡大により世界中で企業活動や人の動きが制限され、消費が大幅に落ち込みました。
この状況を打開するため各国の政府や中央銀行は、大胆な財政金融政策を実施します。
それにより各国の信用力に懸念が生じ、金が通貨より安全性の高い資産として求められるようになりました。
経済状態の悪化が進むと紙幣や株式への不信感が高まり、安全資産である金を買う動きが広がります。
結果、金の価格は一気に跳ね上がり2020年の最高額は7,063円/gと40年ぶりに史上最高値を更新しました。
2022年・・・金相場平均額7,649円/g
2022年2月、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻により、さらに金の価格は上昇し続けまたも過去最高額を更新しました。
戦争が起こると原油価格の高騰や急激なインフレが生じ、物価が上昇します。
そのためインフレの影響を受けづらい金への需要が増し、価格が高騰したと考えられます。
今後の見通し
金の価格は10年~20年後と長期的にみると上昇し続ける可能性が高いといえ、金価格が2倍になるとの見通しもあります。
近年では、世界的な量的金融緩和政策により低金利の状態にあり、金が投資先に選ばれやすい傾向にあります。
今後安定的な資産となる金の需要はますます増加すると考えられており、それに伴って金価格が上昇する可能性が高いと予想されます。
ただし、2023年に入り新型コロナウイルス収束の兆しが少しずつ見えてきたため、経済回復に向けて全世界が動き出すことが予想されます。
消費が回復し倒産企業が減少する、ドルの信用が回復する、またロシアやイスラエルの戦争が落ち着くなど、世界情勢が安定すれば一時的に金の価格が急落する可能性は十分あると考えられます。
金相場の動向を予測するために注目すべき情報
常に変動する金相場の動向を予測するためには、世界情勢をこまめにチェックすることが必要です。
- 株価の動き
- ドル円相場
- 金利の動き
- インフレ、デフレ率
- 社会経済に対するリスク要因(地政学リスク) など
ただし、金の値動きを短期的に予想することは難しいため、5年から10年後などを見据え長期的に考える必要があります。
直近10年間で社会情勢の悪化から金の価格は約2倍に跳ね上がりました。
今後もますます金の希少価値は高まると予想されており、金の価格がさらに2倍以上になることも考えられます。
まとめ
2024年に入ってからも金価格は、最高値を更新し続けています。
昨今の不安定な社会情勢により極端な円安・ドル高傾向にあることや、世界的にインフレが進行していること、低金利が続いていることなどが、金相場の高値が続く要因として考えられます。
80年代から90年代にかけて下落傾向にあった金の価格は、1998年に過去最低額である865円/gとなり2023年現在に至るまでこの記録は更新されていません。
その後、2000年代に入ってからは9.11テロやイラク戦争、サブプライムローン問題やアベノミクスなど、数々の事象をきっかけに投資対象として金の価値が再び見直され、金相場の上昇が続いています。
今後もしばらく上昇トレンドは維持される見通しとなっていますが、ご紹介した通り金は社会情勢によって価格が変動する投資対象です。
金相場の動向を予測するためには、常にニュース等で最新の情報を取り入れるように心がけましょう。